心を楽にするために振り返る子育て

00. 心の発達を理解する為に知っておくべきこと

0-1-1.結婚の意味

「結婚はゴールではない」とか、「結婚は夫婦の始まりに過ぎない」という言葉は、一度くらいは耳にした事があると思います。

これらの言葉を聞くと、何となく、全てが分かったような気になってしまうのですが、結婚前や結婚当初に、これらの言葉の本当の意味を理解している人は、結構少ないのではないでしょうか。

「熟年離婚」なんてことが話題となるようでは、何年も、何十年も結婚生活を続けた後でさえ、理解できない人もいるかもしれないとも感じます。

みなさんは、「結婚によって、何が始まるのか?」ということを考えた事がありますか?

最初に意識することは、「経済的に生活を継続できるように協力し努力する共同作業が始まる」ということが多いと思います。

しかし、心を中心に見直してみると、他とは比べ物にならないほど大切なことがあるのです。

それは、「それぞれの人にとって大切な事をすり合わせ、共有化していくという作業が始まる」ということです。

それぞれの人にとって大切なこととは、次のようなことです。

  • 感覚
  • 感情
  • 思考(価値観)
  • 行動

このとき最も大切な事は、

すり合わせの後に得られた結論は、お互いが満足できるものでなければならない

ということです。

つまり、自分や相手の主張のどちらか一方を選択するようなことではないということです。

その結果としての状態には、次の3つのパターンがあります。

(1)お互いの主張を、それぞれ上手く取り込んだ結論を得る
(2)お互いの主張とは全く関係の無いが、お互いの気持ちが満足できる結論を得る
(3)お互いの相違を知るに留める

夫婦のどちらかが、ある感情・感覚・価値観を持つことによって、もう一方が我慢を強いられることがあってはなりませんし、また、一方的に自分から我慢を望んでもいけません。

生まれ育った家庭で「理解し合う」ということが疎かにされていた場合、(3)を理解することが難しい傾向が生じやすくなります。

ここでは、

自分を相手に受け入れさせたり、相手を無理矢理受け入れたりしなくても、ただ知るだけでお互いを思いやる事ができるようになる

ということを知っておいて下さい。

0-1-2.慣れ親しんだ感覚・感情・思考・行動

自分が慣れ親しんだ感情や感覚や思考や行動は、それを変える必要性が無ければ、今までと同じように続けていきたいものです。

例えば、右利きの人は、「お箸を左手で持ちなさい」と言われても、やはり、慣れた右手でお箸を使い続けたくなることと似ています。

しかし、夫婦に限らず、他者と空間を共にしていると、自分が慣れ親しんだ感情や感覚やや思考や行動が侵食されるような感覚を、しばしば経験するようになると思います。

これは、相手が誰かということに関わらず、他者と空間を共にする事によって、当然のように生じることなのです。

相手が他人であれば、ある限られた時間を我慢するということで、対処することもできます。

その相手から離れれば、また、これまでと同じように、自分が慣れ親しんだ感情や感覚や思考や行動に戻る事が出来るからです。

しかし、夫婦になるとそうはいきません。

人と人とが真剣に向き合うように追い込まれた究極の状態が夫婦なのです。

ですから、当人たちが意識しているかということには関係なく、結婚して夫婦になるということは、

逃げ場を自ら絶って、お互いに正面から向き合おうと決心をする

ということなのです。

0-2-1.慣れ親しんだ感覚・感情・思考・行動を身につける場所

家庭には色々な役割があると思いますが、まず、子育てに際して、まず、はじめに認識しておくべきことがあります。

それは、

  • 家庭(または、それに代わる場所)は、人生を左右してしまうほどのインパクトを持つ『慣れ親しんだ感覚・感情・思考・行動』を身につける場所だ

ということです。

私たち大人は、大袈裟な言い方をすると、

子供の頃に、家庭における様々な習慣を普通のこととして受け入れてきたから、その家庭の中でこれまで生きてくることが出来た

といえるところがあります。

その習慣を身につけなければ、親から怒鳴られたり、親の機嫌が悪くなったりして、子供にとって家庭は安心できる場所では無くなってしまいます。

ですから、親からどんなに理不尽な要求をされても、それを普通のこととして受け入れる必要があったわけです。

そんな事情の中で、自分の安全をつかみ取るという必要性から身につけた習慣なのですが、大人になった後でも、なかなか手放すことができないところがあります。

第一に、それは普通のことになってしまっているため、自分自身が特殊な習慣を身につけてしまっているということが自覚できません。

また、自分が気づき、『悪しき習慣』と理解したものでさえ、それを止めようとすると、何となく嫌な感じがしてしまって、なかなか止められないことが多々あります。

0-2-2.心を癒す場所

家庭の役割は、

  • 自己啓発する場所でも
  • 苦しみに耐える修行をする場所でも
  • 家庭外の出来事を反省するところでも
  • 失敗しないように準備をする場所でも

ありません。 家庭の役割は、

  • 心を癒す場所
  • 心が癒される場所
  • 心の疲れを取る場所

として機能することなのです。

親は、子供のため、そして、親自身のために、家庭をそんな癒しの場所として機能させ続けるようと努力することを求められているのです。

新しい家庭を築き上げていく時のポイントは、細かいことを言い始めれば数限りなくあると思いますが、それらのほとんどは枝葉で、根幹となる重要なことは次の1点だと考えています。

『お互いのことを知ろうとするコミュニケーション』を持ち続けようとする

ここでは、お互いの感覚や感情や思考や行動を大切にし、お互いが満足できるような結論を探し続けようとする関係を

  • 分かり合おうとする人間関係

と表現することにします。

『分かり合おうとする人間関係』が疎かにされていた家庭で育った人は、夫婦という形態をとることによって新たな問題を抱えることになってしまいます。

夫婦共に『分かり合おうとする人間関係』に関する感覚を持っていた場合、共に過ごす年月は、二人がお互いを理解し合うことを手伝ってくれることだと思います。

しかし、夫婦の両方、或いは、どちらかが、この『分かり合おうとする人間関係』に関する感覚が薄い場合は、その夫婦が作る家庭は、子育ての前に、この『分かり合おうとする人間関係』ということに気付く為の学びの場となるのです。

そして、学び合いの結果として『お互いを分かり合おうとする人間関係』にたどり着けるにしても、結婚してしばらく(数年間)は、その夫婦は混乱した人間関係を過ごすことになります。

しかし、子供は、両親が学び終わることを待ってはくれません。

つまり、子供達は、「分かり合おうとする人間関係」という事に関しては、ズブの素人の家庭に生まれてくることになるのです。

ですから、親は子供にコミュニケーションを教えてやるというよりは、子供を『コミュニケーションを一緒に学ぼうとする友』だと思った方が近いのです。

逆に、素直なコミュニケーションをとろうとする子供は、コミュニケーションの師匠と位置づけるべきかもしれません。

もし、ある程度成長した子供のことを理解しようとするときは、「現在の家庭」を点検すると共に、子供が「過去の家庭」で何を学んでしまったかについても合わせて点検してみることも大切です。

子育ての中に、親の悩みは、かなりの確率で子供の心に組み込まれてしまいます。

親が子供に「こうしろ、ああしろ」と言うことは、社会規範的なことを身につけさせるためのしつけという部分もありますが、実は、それよりも、

  • 「心の苦しみを感じさせてしまったら、それを回復させることはできない」という立場に立って、親が想定するつらい出来事を子供に経験させないように、子供をコントロールしようとしている
  • 今の自分自身の心配な気持ちを、子供をコントロールすることで解決しようとしている

といったことが非常に多いと感じています。

また、親が子供の頃に受けた、理解できなかった親からのしつけを、無意識に自分の子供に言ってしまっていることも起こりがちです。

もちろん、親は、意図してそうしようとしているわけではありませんが、結果として、意地悪な言い方かもしれませんが、

  • 自分の悩みや不安を子供に解決してもらおうとしている

という構図を作ってしまっているのです。

この構図によって、子供に『ある基準』を写し込んでいってしまいます。

子供の人生を取り巻く環境や人間関係は、親が子供の頃に過ごしたそれとは異なります。

ですから、そのような状況の中で、子供が親と同じような苦しい経験をするとは限りません。

つまり、子供自身が実際に経験してみないと、子供がどう感じるかは分からないのです。

では、なぜ、親が、子供自身が体験し感じることを恐れるのでしょうか?

それは、親自身の子供の頃に経験したつらい気持ちが、いまだに治まっていないからなのです。

親は、子供の幸せや将来について言う前に、自分が幸せであるかを点検する必要があります。

そして、親が、子供以外のことで、自分自身の本当の願いを叶えようとしていけば、子供も、自分の幸せを自分の力で手に入れるための能力を身につけていけるのです。

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