今回は、「親が自分の感情を子供にぶつけてばかりいると、子供の心に与えるかもしれない影響」について説明します。
まず、結論を書くことにします。
- 人の目がやたらと気にするようになる
- 「自分がない」と感じるようになる
以降、その理由を説明していきます。
以下、母親と子供との関係を例に説明をしていますが、母親だけが子供の心に悪い影響を与えると言っているのではありません。
母親の影響は大きいのは確かなことですが、父親も影響を与えますし、それ以外にも様々なことが複雑に関わっています。
それら全てを関連付けると複雑になり過ぎますので、母親と子供の関係に限定して説明しています。
人は、自分の安全や安心を脅かすことに出合うと、まず、それを回避しようとします。
回避が困難なら、それを自分にとって都合の良い状態に変えようとします。
回避することも変化させることも困難なら、自分自身をそれに適応させようとします。
その対象が、人であっても同じです。
もし、ある人が自分の安心や安全を脅かすと認識していれば、その人との接触を回避して、危険を感じる状況から自分を守ることができます。
(これは恐怖症的な反応です。これには、動物に備わっている学習機能による条件反射が関係しているのですが、その詳細は、後日、説明することにして、ここでの詳細の説明は省略します。)
しかし、自分に脅威を感じさせる人間関係の全てが回避できるかというと、そうもいきません。
人間関係の中には、どうしても、避けられないものが存在します。
では、避けることのできない人間関係とは、どのようなものなのでしょうか?
学校や会社での人間関係も避けにくいものではありますが、その気になれば避けられないものでもありません。
絶対に逃げることのできない人間関係、それは子供にとっての、父親や母親(或いは、養育者)との関係です。
生まれてから一人立ちして家を出るまでの間、特に、思春期以前においては、親は、避けることが出来ない人間関係として、子供の前に立ちはだかります。
特に、小学校入学前の子供にとっては、親は絶対的な存在です。
現代の日本では、「サラリーマンとして仕事に出かける父親」と「家庭を守る母親」という形が一般的です。
ですから、家庭に不在がちな父親は、恐怖症的に避けることが可能な相手という位置づけになりやすいところはありますが、母親(母親的役割の人)を、避けることはできません。
まず、子供は、母親にご飯を食べさせてもらわなければなりません。
また、母親は、右も左も分からない子供に色々と世話もやいてくれます。
24時間のうち、幼稚園や学校に行ったり友達と外で遊んだりしているとき以外は、母親と何らかの関わりを持っていると言っても過言ではない状態です。
ですから、子供は母親と向き合わざるを得ないのです。
母親との関係の全てが、子供にとって心地良いものであれば何の問題もありませんが、そういう訳にもいきません。
小さな子供は自由に行動するので、母親の感情を逆なですることしばしばやってしまいます。
最後は、親の感情がカミナリとなって飛んでくることになります。
子供をしつけるには、感情的になる必要はありません。怒ったフリをすることと、感情的になることは違います。
感情的になるのは、実は、親が子供の頃の、親自身の親子関係が影響しています。転移・投影という考え方が関係してきます。(参考:精神分析的な解説)
子供は、そんな感情を持った母親を、恐怖の対象として避けることはできません。
しかし、何かをしなければ、親の感情を受けて苦しい状態に陥ることを繰り返してしまいます。
子供が安心に生きていくためには、日常の大部分を占める『母親と過ごす時間』を安心なものに変える必要があります。
そこで、母親が感情的にならないように振舞うことを覚えていきます。
親が感情的になることを避けるには、次の2つが重要なポイントとなります。
- 親が「どのような時に感情的になるのか」を理解すること
- 親が感情的になりそうな行動をしないように細心の注意を払うこと
そして、次のように行動すれば良いのです。
- 危険な雰囲気を感じる行動は起こさない
- 親が気持ちの変化を敏感に察知する
- 危険な兆候を察知したら、軌道修正する
この精度を高めていけば、あのわずらわしい状況(親が感情的になる)に陥ることを防ぐことができます。
これは、「相手の気持ちを読んで、自分を相手の気持ちに沿うように変化させる」ことを意味します。
それが習慣化して当たり前のことになると、親が感情的になったとき、親がそのような状態になるのは「自分に責任がある」、「自分に原因があるからだ」、「自分が変われば親はそうはならない。
親がそうなるのは自分が悪いからだ」と錯覚するようになるのです。
(別の表現をすると、「自分の方を変えた」という事実が、「自分が悪いから自分を変えた」という暗示を含んでおり、その暗示を受け入れた結果、自分自身も「自分が悪いから変えなければならないんだ」と思い込むようになると言うこともできます。)
このようにして、相手の心の動きを読み、相手の気持ちに合わせて自分を変えるようになっていきます。
そして、「自分の感情の責任は自分にあり、相手の感情の責任は相手にある」ということが分からなくなり、相手に負の感情が生じるとそれは自分の責任だと感じてしまい、自分が相手の感情を修復しなければならないと感じるようになるのです。
また、「相手の気持ちを読んで自分の行動をコントロールする」ということを繰り返しているうちに、やがて、子供の考え方も、親の考え方と一致していきます。
子供にとって「親と同じことを言う」ということは、親から自分を守る、最も効率の良い方法なのです。
そして、思考を親に合わせようとするとうちに、みせかけの感情が生じ、それが自分の感情から離れて、親の感情と合っていくようになっていきます。
このようにして、子供の考え方や感じ方は、親の考え方や感じ方に乗っ取られてしまうのです。
親が、子供以外のことに対してでも、頻繁に、悲しそうにしたり、苦しそうにしたり、怒っていたり、不機嫌にしていたりしても、子供は不安な気持ちになります。
そして、子供は、自分にとっての安全で安心な状態を取り戻すために、親の感情を回復させようと振舞ってしまうのです。
この「相手の感覚を早期に察知して、それを修復しよう」とする感覚は、少なくとも自分の生まれ育った家庭の中では、安全で安心な状態を維持するためにとても役に立ちます。
役に立つのですが、次のような傾向を身につけてしまうことにつながります。
- 他人の心の状態に敏感に反応する
- 他人も同じ感じ方をすると考え、自分もそう感じようとする
- 他人も同じ考え方をすると考え、自分もそう考えようとする
- 他人も同じように行動すると考え、自分もそう行動しようとする
これらの傾向性、家庭を離れたとき、どうにも厄介な事態を引き起こします。
「相手の気持ちを読む」という手段、或いは、そのロジックは、自分の家庭以外の他人にも有効であるとは限らないからです。
(特に、ロジックは使い物にはならないことの方が多いと想像できます。)
社会の中で生きる多くの人は、各々が自由に感じ考え行動します。
相手の気持ちを読もうとする傾向を持つ人が、そんな自由な人たちの中に、自分の身を置いたとき、次の2つの理由から、とても混乱した状態になってしまいます。
- 気持ちを読まなければならない対象は多数になる
- その感じ方・考え方・行動の様式は千差万別である
そんな中で、自分の気持ちをどこに定めれば良いのか分からなくなってしまいます。
また、人によっては、次のような状態に陥ってしまうこともあります。
- 他人と同じように感じない自分を責める
- 他人と同じように考えられない自分を責める
- 他人と同じように行動できない自分を責める
つまり、自分の中に「他人と同じではない部分」を感じると戸惑ってしまうようになるのです。
「自分が同じではない」ということに意識が向けば、自分を変えようとして自分を責めることになります。
逆に、「他人が同じでない」ということに意識が向けば、他人を変えようと他人を責めたることになります。
今回の投稿でまず知って頂きたいことは、
- このような状態になるのは、心に問題があるからではなく過去の習慣によって陥る
- その習慣さえ変えることが出来れば、このような状態から抜け出すことが出来る
ということです。
少し長くなりましたので、今回はこの辺で終わります。
次回は、相手の感情と自分の感情を混乱してしまったときに陥る状態を、もう少し具体的に説明する予定にしています。
コメント