- 現代の日本社会においては、
- 子供の将来を心配するのは、『一般的な親心』である
- 子供の将来を心配するのは、親として『当たり前のこと』である
というように受け入れられているところがあります。
そして、その親自身の心配を解消するため(親の心配を子供に解消させるため)に、
- 子供のしつけ
- 子供の教育
へと親が熱心になることに疑問を抱く人はほとんどいません。
現代社会は、「子供の将来」、「教育」、「しつけ」というキーワードに対しては、殆どの人は思考停止状態に陥っているといえます。
「子供の将来」、「教育」、「しつけ」を大切に考えるのは悪いことではありません。
ただ、その比率が極端に大きくなってしまうと、事態は変わってきます。
今回は、
- 「現代社会の教育環境」が作り出す雰囲気を、親が鵜呑みにしてしまい、子供の将来を心配して、しつけや教育にこだわってばかりいると、子供だけでなく親自身も不幸にしてしまうかもしれない
というお話です。
作り話で説明します。
ある親は、「子供の将来ために」と教育やしつけを重視して、
- ああしろ、こうしろ
- あれはするな、これはするな
と、親が良いと考える価値観に従って、厳しく子供を育てていたとします。
「将来のために、今、大事なことは・・・・」と子供がしたいということを我慢させたり、「将来のために、今、大事なことは・・・・」と怒鳴りつけて無理にやらせたり。
そんな風に、子供の未来を夢見て暮らしていました。
ところが、ある日、突然、子供が帰らぬ人となってしまいました。
その親は、後悔しました
- 我慢ばかりさせなければよかった・・・
- 嫌がることを無理にさせなければよかった・・・
- もっと、優しくしてあげればよかった・・・
そんな思いをしないためには、どうしたら良いでしょう?
人は、今しか生きることができません。
過去は単なる記憶で未来は単なる妄想です。
ですから、今(たった今)を良く生きることの積み重ねが、その人にとっての良い人生を創り上げていきます。
つまり、良い人生とは「今を生きる」ということです。
(今回は詳細の説明は省略します)
これを親子関係において実現しようとすると「今を共に生きる」という表現になります。
(その他の関係性(人間関係、自然との関係・・・・)においても同じです。)
人間関係の中で、「今を共に生きる」とはどういうことなのでしょうか?
それは、感情を共有することだと考えています。
もう少し具体的に書きます。
(1)子供が喜んでいたら、一緒になって喜ぶことで、子供の喜びの感情を共有することができます。
(2)子供が悲しんだり苦しんだりしていたら、そんな子供を親が抱きしめることで、子供の悲しみや苦しみの感情を共有することができます。
(3)子供が穏やかに過ごしていたら、ただ穏やかに寄り添っているだけで、穏やかな気分を共有することになります。
この3つをいつもしっかりやっていれば、きっと、前に書いたような後悔は少なくて済むんじゃないかと考えています。
ちょっと、余談です。
カウンセリングにアンプリファイという用語があります。
簡単に説明すると、相談者の話に適切な「合いの手」を入れることで、相談者の心にある感情を増幅させることを言います。
風船に適度な空気を入れれば、風船が破裂することはありません。
でも、限界を超えて空気を送り込むと、風船は破裂します。
心もこれと同じです。
感情の増幅は、心の堤防にせきとめられていた感情を放出することにつながります。
そして、破裂して初めて、その感情を溜め込んでしまう心の風船があったことに気付きます。
カウンセリングの目的の一つとして次のようなことが挙げられます。
- 人に守られながらその感情を排出する心地よさを体験すること
- 排出した後の安心感を体験すること
- それらの体験によって、感情の通りを良くして適切に排出できるようになること
子供が喜んでいるときに親が一緒になって喜ぶこと、子供が悲しんでいるときに親が子供を抱きしめることには、アンプリファイの作用があるのです。
子供の頃に、このように親に接してもらう経験を積み重ねると、感情の通りが良くなり、感情を溜め込みにくい心を育てることにつながります。
感情を溜め込まないのですからな、溜め込んだ感情が爆発することもありません。つまり、俗に言う『キレる』という状態に陥りにくい心へと成長していくのです。
今ばかりを考えていたら、童話の「アリとキリギリス」のキリギリスみたいに、「将来、子供が苦労することになるのではないか!?」 と心配になるかもしれません。
でも、 今は未来につながっているので、きっと大丈夫だと考えています。
(1)嬉しい時に、親に一緒に喜んでもらった経験は、自分の願いを叶えるための行動を、自分に引き起こさせる活力となります。
「自分にとって嬉しいことを実現すれば、一緒に喜んでくれる人がいる」という漠然とした感覚が身につきます。
その感覚は、将来の子供の思いを大切にさせてくれます。
(2)悲しいとき、苦しい時に抱きしめてもらえた経験は、明日への勇気となります。
「辛いことがあっても、一緒にいてくれる人がいる。抱きしめてもらえたらまた、安心な気持ちに戻ることができる」という漠然とした感覚が身につきます。
その感覚は、将来の子供が、自分の願いを叶えようとして行動しようとしたときに勇気を与えてくれます。
失敗を恐れる不安な気持ちが生じたとしても、「失敗しても、どうせ帰って抱きしめてもらったら、安心な気持ちになれる・・・」と、一歩前に踏み出させてくれます。
(その不安に対して一歩踏み出す力を、勇気と呼ぶのだと思います。)
(3)穏やかなときに穏やかに寄り添ってもらった経験は、明日の心の安定につながります。
「何でもない自分でも大丈夫」、「頑張っていない自分でも大丈夫」という漠然とした感覚が身につきます。
その感覚は、将来の子供の心の安定につながります。
また、何もないときは、必要以上に「何かをしなければならない」という思いに駆り立てらることなく、ゆっくりと穏やかな気持ちのまま休息することを助けてくれます。
この(1)~(3)の部分さえ大切にしてあげれば、あとは「子供が、自分の責任で自由に生きていけば良いのかな」って思っています。
子供の方が、親よりもよっぽど賢いかもしれませんしね!(笑)
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