「魚を与えるのではなく魚の釣り方を教えよ」という言葉を何度か聞いたことがあります。
この意味は、次のようなものだと理解しています。
お腹を空かした人に魚を与えることは、その人の空腹を満たしてあげるための手っ取り早い方法だが、それでは、その人は空腹になる度に誰かから魚をもらい続けなければならない。
これに対して、少々面倒でも、釣り針を与えて魚の釣り方を教えれば、空腹になっても自らの力で魚を捕まえて食べられるようになる。
目先のことを満たすことが、「本当に相手のためになる」とは限らない。
「本当に相手のためになることは何か?」と、しっかり考えて対処することが大切。
このような考え方を、「子育て」に当てはめて考えると、どのようになると思いますか?
きっと、「優れた子育ての方法」を知ることが「釣り針を得て釣り方を教えられること」と考える人は多いと思います。
また、「優れた子育ての方法」は、陥りそうな状況を細かく場合分けして「こんなときはこうした方が良い」と対処方法が示されることを期待していると思います。
子育ての「How to 本」に頼ろうとする心理は、そういった感覚でしょう。
しかし、「How to 本」で得られる様々な方法論は「魚」であり、「釣り方」ではありません。
なぜなら、子育てで遭遇する状況は千差万別で、「How to 本」が想定している場面には当てはまらないからです。
子育てに関係する本を読むときには、そこに記されている「魚」に振り回されるのではなく、「魚」の背景に隠れている(かもしれない)「釣り方」をひも解こうとしながら読むことが大切です。
今回、オススメする本は、「Q&Aこころの子育て―誕生から思春期までの48章 (朝日文庫) 」(河合 隼雄 著)です。
この本には、「魚」のこと、つまり、「このようなときには、こうしなさい」といったことは、あまり書かれていません。
根底には、「様々な状況に、各自が適当に対処すれば良い」という思想が流れていると感じます。
ですから、具体的な対処方法を求めている人には、ちょっと、物足りない感じがするかもしれません。
どこかのページに
- 子育てにおいて、親が目指すべきことは、「様々な状況において、親が自らが考えて、臨機応変に対処できるようになること」
といったことが書かれていたと思います。
「様々な状況において、親が自らが考えて臨機応変に対処する」、これが、子育てにおいての「魚」だということです。
この本には、「魚」を釣るための情報、つまり、「釣り方」に当たる情報がたくさん紹介されていると感じました。
「釣り方」をひも解こうとしながら読まなくても、それが前面に押し出されているのです。
どのような流れで、現在のような世の中(人々の心理状態)に至ったのかも、わかりやすく説明されています。
是非、繰り返し読んで頂きたいです。
読む毎に理解が深まっていくはずです。
きっと、「魚」を釣る力を育ててくれると思います。
オススメです。
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