親が、子供のことを心配し過ぎると、次のような状態に陥ることがあります。
- 「あれができていない」「これができていない」と指摘し過ぎる
- 「あれをしろ」「これをしろ」と指示をし過ぎる
- 子供のできていないところを代わりにやき過ぎる
これには原因があるのですが、長くなりそうなので、次々回くらいに投稿しようと思います。
このような親の行動は、次のように言うことができます。
- 子供が感じ・子供が考え・子供が行動すべきところを、親が代わりにやってしまう
これは、「自分と他人の感情や感覚・思考・行動の区別が付いていない状態」で、一般的に「共生関係」と呼ばれている状態です。
「過干渉」ということもあります。
これには、いくつかのパターンが考えられるので、
その辺りを少し詳しく考えてみます。
1. 健康な関係性と不健康な関係性
まず、ごく普通の人のごく普通の行動パターンをご確認下さい。
1-1. ごく普通の人のごく普通の行動パターン
■ 「自分が経験したことに対して、自分が感じ、自分で考え、自分で行動する」
子供のことを理解するために、次のように書くことにします。
■ 「子供が経験したことに対して、子供が感じ、子供で考え、子供で行動する」
これを「健康的な関係性(人間関係・親子関係)における行動パターン」とすると、「不健康な関係性(人間関係・親子関係)における行動パターン」は次のようになります。
1-2. 不健康な関係性(人間関係・親子関係)における関係性行動パターン
子供の感覚や感情・思考・行動の一部(又は、全部)を、親の感覚や感情・思考・行動で置き換えられる割合いが高いとき、その親子関係が、不健康な関係性である恐れがが高まります。
このパターンを細かく分けると、次のようになります。
子供が経験したことに対して
(1) 子供が感じ、親が考え、子供に行動させる
(2) 親が子供の代わりに感じ、子供に考えさせ、子供に行動させる
(3) 親が子供の代わりに感じ、親が子供の代わりに考え、子供に行動させる
(4) 親が子供の代わりに感じ、親が子供の代わりに考え、親が子供の代わりに行動する
1-3. 「親が子供の代わりに~」の解説
1-3-1. 「親が子供の代わりに感じ」という部分は、
- 子供が主体的に感じたことを親が否定して、
- 親の感覚・感情が正しいと受け入れることを強要する
これには、次の2つのことを習慣づける働きがあります。
- 自分では感じないこと
- 感じたとしても、親が感じるように感じること
1-3-2.「親が子供の代わりに考え」という部分は、
- 子供が自発的に考えたことを親が否定して、
- 親の考えが正しいと受け入れることを強要する
これには、次の2つのことを習慣づける働きがあります。
- 自分では考えないこと
- 考えたとしても、親が感じるように感じること
1-3-3.「親が子供の代わりに行動する」という部分は、
- 子供の自主的に行動するする能力を否定して、
- 親の行動が正しいと受け入れることを強要する
これには、次の2つのことを習慣づける働きがあります。
- 自分では行動しないこと
- 行動したとしても、親が行動するように行動すること
2. 不健康な関係性と学習すること
親が、自分たち親子が不健康な関係性の行動パターンに陥っていることに気づかずに、聞きかじった子育て論、例えば、
- 子供には、自分で感じさせるべきだ
- 子供には、自分で考えさせるべきだ
- 子供には、自分で行動させるべきだ
といったことを実践すると、大変なことになります。
子供は、何をもとに何を考えてどう行動すれば良いのかが、分からなくなってしまうのです。
2-1. 子供に伝わるメッセージ
なぜ、子供は混乱してしまうのかを説明します。
口では子育て論に基づいて「自分で考えて行動しなさい!」と、子供に自立を迫っているのに、言葉以外の行動によって、子供には、逆のメッセージを伝えてしまうからです。
- 親が感じていることを伝えることで子供が感じていることを否定して、親が感じていることをを解消する方法を子供に考えさせ、子供に行動させようとする
- 親が感じることをきっかけに親が考えたことを伝えることによって、子供が感じたことをきっかけに子供が考えたことを否定して、親が考えた通りに子供に行動させようとする
- 親が感じることをきっかけに親が考えたことに基づいて親が行動することによって、子供が自ら感じて考えて行動するという、人にとってごく普通の営みを否定する
また、このような傾向のある親は、
- 子供が自分で感じれば、自分の感じ方と異なれば、「どうしてそう感じるの!?」と責めるところがあります。
- 子供が自分で考えれば、自分の考え方と異なれば、「どうしてそう考えるの!?」と責めるところがあります。
- 子供が自分で行動すれば、自分の行動の仕方と異なれば、「どうしてそんなことをするの!?」と責めるところがあります。
仮に、子供が親の確認なしにやったことが上手くいっても、「今回は、たまたま上手くいったから良かったけど・・・」などと言って、無意識的に「子供よりも自分が優れている」と主張せずにはいられないところがあります。
結局、子供が何をしても、子供を認めないのです。
「認めない」というのは、一種の否定です。
親に否定されることは、子供には、自分の存在を否定されることと等しく大きなストレスになります。
そこで、子供は、親から否定されないように行動を修正していくのです。
2-2. 自分の守り方の方向性
「 2-1. 子供に伝わるメッセージ」の1~3の状況から自分を守るには、次の3つの方向性があります。
- 「1」を回避する方法は、自らが感じないこと
- 「2」を回避する方法は、自らが感じないこと、そして、自らが考えないこと
- 「3」を回避する方法は、自らが感じないこと、自らが考えないこと、そして、自らが行動しないこと
また、子供が、自分が感じたことや考えたことを親に伝えると「子供が親に反抗している」と解釈されたり、感情をエスカレートさせて「親に口答えするのか!」と怒られたりする危険性があるので、
- 自分の本当の気持ちを言わない(或いは、親が言いそうなことを言う)
というのも自分の安全を確保するために有効な手段となります。
「黙り込む」という手段もあります。
何も言わずに黙っていたら、それはそれで「何とか言いなさい!」と怒られるでしょうが、「言いなさい」という言葉の罠に引っ掛かって、本当の気持ちを言ってしまて激高されるよりはよっぽどマシだからです。
2-3. 心理的な安全のために、身につける反応(条件反射)
不健康な関係性によって成り立っている親子関係の中では、子供たちは、各々の家庭において安全度の高い対処を学習してそれを「条件反応(反射)」として身につけます。
2-3-1. 感覚や感情を麻痺させる
もっとも手っ取り早い反応が、自分の感覚・感情を麻痺させ、自分が感じていることに気づかなくしてしまうことです。
感じなければ、感じることによって生じる
- 考える
- 行動する
という行動のパターンを生じさせる必要もなくなります。
そうすると、不健康な関係性のところで説明した1~3の何れの状況も回避することにつながります。
2-3-2. 思考を停止させる
自分が感じると、頭を真っ白にすることで、思考を停止させるという反応もあります。
考えなければ、不健康な関係性のところで説明した2~3の状況を回避することにつながります。
2-3-3. 行動を抑制する
何か行動しようとすると、大きな不安な気持ちを生じさせたり、「やっても仕方ない」という無気力な気持ちを生じさせたりして、気持ちを萎えさせて、行動を起こせなくなってしまうという反応もあります。
行動しなければ、「親が勝手に行動する」ということも受け入れられますし、行動したことについて、あれこれと口出しされることも回避できます。
2-3-4. 本当の気持ちを隠す
何か言いたいことがあると、言葉がのどにつかえてしまって、言葉が出なくなるような反応が生じます。
何かがあると黙り込んでしまうというのは、そんな心理が働いているのです。
逆に、明るく笑いながら「何でもないよ!」ということでも、本当の気持ちを隠すことができます。
2-4. 自分の守り方のもう一つの方向性
「 2-1. 子供に伝わるメッセージ」の1~3の状況から自分を守るもう一つの方向性があります。
- 「1」を回避する方法は、親と同じように感じること
- 「2」を回避する方法は、親と同じように感じること、そして、親と同じように考えること
- 「3」を回避する方法は、親と同じように感じること、親と同じように考えること、そして、親と同じように行動すること
少し長くなりましたので、以降は、次回の投稿で書くことにします。
予定としては、「このような学習が、子供の日常や将来に、どのような影響を与えるか」といったことを考えてみるつもりです。
- 「~~~ だったら、可哀想だから」と、あれこれと子供の世話をやく
- 【補足1】健康的な関係性における行動パターン、不健康な関係性における行動パターン
- 【補足2】親の過干渉が子供の性格に与える影響
- 【補足3】親の過干渉が解決への取り組み方へ与える影響
- 【補足4】子供のことにあれこれと口出ししてしまう原因
コメント